ニュージーランドの自然の恵みで、

内側からも外側からも輝く

美しい肌と髪のために

 

 

ハチドクやプラセンタなどをぜいたくに配合したアンチエイジング商品の販売と美容室を経営する「オアシス(Oasis)」。髪、化粧品、サプリメントからトータルな美容を提供するために奔走するパワフル女性、渡邊美帆さんにお話を伺いました。

 

KT: ヘアサロンを起業したきっかけを教えていただけますか。

2005年4月1日にヘアサロン「アイシス」を起業したのは、私の夫が美容師だったから、というのが大きな理由です。それと私自身が日本で会計の仕事をしていたので、会社の経営に関しては知識もあったという事もあり、現在のサロンと同じこの場所で「美容師1人、運営と雑用全般1人」の2人だけでスタートしました。「絶対に、この立地だし、いけるだろう」という確信というか、半分は若さと勢いで始めた部分もあります。

 

KT:開業時に気をつけていた事を教えてください。

リスクというか、コストにかける費用に関しては、きちんと考えました。資金が自分たちの貯金しか無かったので、なるべくコストを抑えるようにしました。例えば、家賃に関してはシティ中心でも道路沿いではなくて上の階の少し安めの店舗を選び、機材は全てを新品ではなく中古品を取り入れたり、人件費に関しては、私たち2人しかいなかったので、かからなかったというかゼロという状態でした。そして「1日でこの位の売上げがあれば、家賃や薬剤などの支払いができる」と考えながら、朝から夜までずっと働いていました。当時は、ビジネスの売買代金や家賃自体が安かったのと、美容室が少なかったというのも良かったのでしょう、開店してから1ヶ月で初期投資の回収と少しですが利益を計上することができました。本当は、そこからが始まりというか「これから売上げを上げる為にターゲットを拡げる」という事を考え始めて、日本語情報誌に広告を載せたりスタッフを増やしたりしました。その効果があって顧客層も韓国人、中国人、日本人と増えていき、同時に売上げも上がっていきました。

 

KT:オリジナル製品をつくるきっかけを教えていただけますか。

そうですね。もともと「美容」に関することが好きでとても興味がありました。ニュージーランドの紫外線対策やケアをするために、たくさんの製品を試しました。この国では、サプリメントや化粧品は外資系の高額な製品から10ドル前後の製品までありましたが、成分や効果に対して不満を感じていました。「自分が飲みたいサプリメントや化粧品を好きな配合で作りたい、提供したい」という思いから、2010年3月に「Oasis Products New Zealand」を立ち上げて、最初はサプリメントの販売、つづいて化粧品の販売を開始しました。

当時、愛飲していたニュージーランド産の羊プラセンタにとても効果を感じていたので、さらに高濃度の成分で配合したものを作ってもらうよう工場に依頼しました。私自身愛飲していますが、寝不足な時でも肌の調子がとてもよく、とても満足しています。ただ、最初は失敗というか試行錯誤しながらで大変でした。製品は大量に注文しなければいけなくて大量の在庫を抱えました。その在庫をこの国で販売するのは大変だったので、日本に輸出してショッピングサイトでの販売を開始しました。同時に関節痛に効果がある「マッスル」のサプリメントも販売しましたが、それは、なかなか売れずに苦労しました。やっと、少しづつ注文が入るようになった時期に、輸出に関する書類不備があって、一時期、輸出することができなくなり、大量に在庫があるのに送れない、売れないという厳しい時期もありました。起業して1年未満という事もあり、審査も厳しかったようです。しばらくして、違うショッピングサイトでの販売に変更、販売を再開することができましたが、精神的にきつかったことは、今でも覚えています。

つづいて、化粧品のことですね。少し前になりますが、ニュージーランドのハチドクがイギリス皇室のエステで使用されていることを知り、半信半疑で市販されていたハチドクのクリームを購入してみたんです。実際に使ってみると、とても即効性があるように感じたのですが、「もっとこんな成分を入れたほうがいいのでは。なるべく自然に近い成分を使いたい」という思いがあったので、成分を調べて工場に発注したんです。それに合わせてアイクリームや美容液も作りました。

 

KT:工場に注文するのは勇気が必要でしたよね。

当時はリスクよりも理想の商品を作ってみたいという気持ちが強かったですね。美容室という資本があったというのも大きいです。「短期間でお店を軌道に乗せた、という実績もあったし、次のステップに進む」という気持ちも後押しした感じです。当時、あまり英語は得意ではなかったけど、工場と値段交渉したり、満足のいく製品が出来上がるまでは、何度も試作を重ねて自分でも試して、ようやく納得いくものを低価格で商品化しています。少し、ゆっくりですが、こだわりたいんです。

今は石鹸も作っていて、もうすぐ販売開始です。今後は、シャンプーなどのヘアケア製品づくりを手がけていきたいと考えて、試作を進めています。

 

KT:最後に、ニュージーランドで起業したいという方に向けて、メッセージをお願いします。

慎重に原価計算をして、計画的に運営してほしいです。家賃などの固定費用は必ず掛かるので、どこまで売上げれば利益になる「分岐点」になるのかを見極めて、価格設定をすることが必要だと思います。やる気があっても資金という部分が崩れたら、事業を続けることもスタッフを守ることもできなくなります。あとはスタッフを大切にすること。サービスの向上を図る為、直接お客様と接するスタッフがハッピーな気持ちで働ける環境を提供することがビジネスの鍵になるように思います。

 

 

【インタビューを終えて】

インタビュー始めに「私は楽観的で、どんぶり勘定なんです」と話していた渡邊さん。話を聞いていると、押さえるべき事はしっかりと押さえる経営者の視点をもっている方だと感じた。スタッフのビザ取得に奔走したり、新しい薬剤や製品が届いたら自分で試したり、スタッフのカット練習にも自らが椅子に座ったりと見た目からは想像できないパワフルな女性経営者。新事業に取り組む渡邉氏の今後が楽しみである。

 

プロフィール

渡邊美帆。オークランド在住。夫と子ども2人の4人家族。1999年にワーキングホリデービザで渡航し、結婚。2005年にヘアサロン「アイシス」を起業、その後「オアシス」ヘアサロンに名称を変更。2010年にはスキンケア製品を扱う「オアシス・プロダクト」を起業。現在に至る。趣味は料理と数独。

Oasis Hair Dressing(oasishairnz.com)┃Oasis Products New Zealand(oasisproducts.co.nz

 

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.92(2017年11月号)」に掲載されたものです。

 

 


 

 

 開業は2005年。現在はオークランドのアンザック・アベニューにある本店ほか、20175月にオープンしたばかりのグレンフィールド店をはじめ、計3店のフランチャイズ店舗を構える「たんぽぽラーメン(TANPOPO Ramen)」。日本人や現地の人から、ラーメンといえばたんぽぽ、と言われるまでに成長した同店の店主、栗原道生氏に、ニュージーランドで起業したきっかけや、そのビジネスの成功の秘訣をうかがった。

 

 

KT: ニュージーランドで起業したきっかけを教えてください。

高校卒業後は、日本のとあるパン屋で働いていました。休憩時間はいつも近くのラーメン屋に食べに行っていて、そこのオヤジさんがいつも首にタオル巻いて、汗をかいていたんですね。その姿を見て、なんか妙にカッコいいと思ったんです。一方で俺は何をやっているのだろう、と。いっちょまえに白いシェフコートなんか着ちゃってさ、なんて考えたことを今でもよく覚えています。でも、だからといってその時にラーメン店を開こうとは考えませんでした。パン屋で4年働いた後は、高校時代にアルバイトでお世話になったハンバーガー店の店長として5年働き、その後は新しい世界を見てみたいと、ニュージーランドにワーキングホリデーで渡航しました。その時働いていたラーメン店で、永住権が取れたんです。せっかく永住するなら、あのカッコいいオヤジさんがいるようなラーメン店を始めよう!と心に決めました。そこで一旦日本に戻り、ラーメン店で修行して、再度ニュージーランドに戻ってきました。

 

KT: ニュージーランドに戻ってきて、最初に取り掛かったことは何ですか?

 

まずは物件探しでした。市内の空き物件を見てまわっていたところ、奥に広い2階建ての建物の物件を見つけたのですが、そこはなんかラーメン店には向かないなと思って帰ろうとした時、そこの2軒隣で中華料理店が営業しているのを見つけました。不動産業者にその物件がいつまでの契約なのか聞いてもらうよう頼んでみると、そこのオーナーからもうすぐ契約期間が終了するから営業の権利も売ってくれるという話が舞い込んできました。それからは一気に話が進み、店舗に関する契約を弁護士に頼み、会社設立の手続きや改装準備、会計士の決定、リカーライセンスの申請などを行い、約4ヵ月後には開店できる状態になりました。実はその中華料理店が、現在の本店です。ワーキングホリデーで滞在していた時からこのエリアを知っていて、店舗を探している時もこの辺りでやるんじゃないかって思っていたけど、まさか本当にここで店を構えられる日がくるなんて思ってもみなかったですね。

 

KT: 開店当の反響はいかがでしたか?

 当日は何も告知していなかったのに、なんと満席で大盛況! すごく忙しかったのを覚えています。個人的には豚骨ラーメンをおすすめしていたのに、なぜかキムチラーメンが売れたり、ラーメンを食べながらパンが欲しいと言ってくるお客さんもいたり(笑)。その方はラーメンをスープ感覚で食べていたんでしょうね。とにかく、色々と試行錯誤しながら一生懸命でした。

 

KT: フランチャイズ展開を決めたのは、何がきっかけだったのでしょうか?

趣味でサーフィンをしていた時、友人とビーチでばったり会って、男同士で一緒に砂を掘りながらいろいろ話をしていると、フランチャイズをやってみてはどうかと提案されたんです。試しにウェブや雑誌で告知してみたところ、なんとオーストラリア人のカップルから応募がありました。それからこの店で修行を積んでもらった後、メルボルンに「リトル・ラーメン・バー(Little Ramen Bar)」が開店しました。2012 年には店の常連さんがハイランド・パーク内に「たんぽぽラーメン・ホウィック店(TANPOPO Ramen Howick)」を、2017年には9年半も本店で働いてくれたスタッフがグレンフィールド・モールの近くに「たんぽぽラーメン・グレンフィールド店(TANPOPO Ramen Glenfield)」を開店しました。

 

KT: 店舗が12年も続いている秘訣を教えてください。

 そうですね、店舗の内装とか、もっとカッコよくした方が現地の人からは好まれるのかもしれませんが、俺はラーメンを食べるならテーブルだけあれば十分と思っているので、あえて店内の装飾はしていません。もしかしたら、そういう変にローカライズしないところがよかったのかもしれませんね。俺はラーメン店がやりたかった。ラーメンしか作れないし、今もこれからも俺らしく、日本のラーメン店らしく、ずっと続けたいと思っています。

-最後に、ニュージーランドで起業をしたいという方に向けて、メッセージをお願いします。

 起業するのなら、とにかく従業員を大切にする、という意識は必ず持っていてください。だって、自分ひとりでは何もできないでしょう?従業員を大切にする気持ちも覚悟もないなら、起業は絶対にするなと伝えたいですね。

 

【インタビューを終えて】

今年で12周年を迎えた「たんぽぽラーメン」。フランチャイズ店舗の展開や、10周年の際にはオリジナルの冷凍餃子を店頭や日本食材店で販売するなど、新しい事業にも取り組んできた栗原氏。「ラーメン店のオヤジ」としてのこだわりを見せ続けているからこそ、12年も続けてこられたのだろう。栗原氏はインタビュー中も始終笑顔で取材に対応してくれて、客が来ると大きな声で「ハロー」と呼び掛けていた姿が印象的だった。

 

 

プロフィール

栗原道生。オークランド在住。妻と子ども2人の4人家族。趣味はダイビング、サーフィン。1999年にワーキングホリデービザで渡航し、2015年にラーメン店を起業。現在に至る。

Ramen TANPOPOwww.tanpoporamen.co.nz

  

 この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.91(2017年10月号)」に掲載されたものです。