高等教育機関での「交換留学」

-日本で学ぶKIWI学生-

 

近年、高等教育機関では「交換留学」が盛んに行われています。当校においても、日本語科の学生はこの制度を利用して、日本での大学生活を経験しています。

 

当校には、日本の大学から多くの交換留学生が英語を学びに留学してきます。当校からも、日本語科学士課程の学生たちが日本の大学へ留学するというチャンスに恵まれています。

 

ここ数年で、当校の学生たちが留学した日本の大学は、広島修道大学、京都産業大学、杏林大学(東京)、横浜国立大学の4大学になります。3年生の前期を日本で過ごし、後期の課程を修了すると、卒業です。もちろん、誰もが日本へ留学できる訳ではなく、審査を受けて合格しなければなりません。日本語科のほとんどの学生は、この交換留学を目標にしており、モチベーションの向上と維持につながっています。

 

交換留学に参加した学生の日本語の上達度には個人差がありますが、言語面で大きな変化が見られなくても、人間として成長する機会を与えてくれます。親しんできた環境から、離れた異国での生活を通じて自分のアイデンティティーや価値観を見つめ直すことができます。いろいろな人と交流し、知り合い、友情を育むこともできます。いいことばかりではなく、カルチャーショックを経験したり、コミュニヶーションがうまく取れず不快な思いをすることもあるでしょう。しかし、困難は自分を強くするチャンスです。つまり、プラスもマイナスも今後の人生の糧になるわけです。

 

今後も、多くの学生に交換留学を通じて、ニュージーランドの教室では学べないことを経験し、日本語が上手になるだけではなく立派な国際人に成長してくれたら、うれしいです。

 

デバーグ平部良子。Ara Institute of Canterbury(1906年創立)。

クライストチャーチ中心部に位置するシティーキャンパスで、人文学部日本語科の講師として教えている

 

 

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.92(2017年11月号)」に掲載されたものです。

 


映画から感じた日本における差別について(学生の感想文より)

 

日本における差別問題は現代でも根深いものがあります。「死」が不浄とされてきた近世から現代までの死生観や宗教観、職業、家柄など、さまざまな要因でさまざまな差別が生まれ、また中央政府や幕府からも差別が政治的に利用されてきた観もあります。日本人でも理解するのが難しい、日本の差別問題ですが、映画「おくりびと」を観たキウィの目にはどう映るのでしょうか。

 

ARA日本語科3年生のエマ・レナードさんが、映画「おくりびと(2008年)」を鑑賞して書いた感想文の一部をまとめました。

 

「美香(主人公の妻)が納棺師として働く大悟(主人公)に「そんな汚らわしい仕事は辞めて」と懇願するシーンがある。大悟が慰めようとすると、美香は「触らないで!汚らわしい!」と叫ぶ。山下という友人に出会った時のシーンでは、山下は大悟に「もっとましな仕事に就け」と言う。美香にとって夫の仕事は恥ずべきものだと感じ、結局、東京に帰ってしまう。

 

 日本の社会史の中でも、江戸時代にはシステム的な差別があったのは知っていたが、現在でも特定の職種に差別があるということは、この映画で初めて知った。ニュージーランド人の私にとって、このような差別には理解し難いものがある。私が知っている限り、ニュージーランドでは「死」に関する仕事をしている人にこのような差別意識を持っていないと思う。「納棺師として働く」と言われたらある程度変だと思うのも無理はないが、汚らわしいことだとは思わない。ただの仕事だ。このような差別が日本であると知って驚かされた。」

 

 日本の知られざる面を世界に知らしめることができたのも、「おくりびと」のひとつの功績かもしれませんね。

 

デバーグ平部良子。Ara Institute of Canterbury(1906年創立)。

クライストチャーチ中心部に位置するシティーキャンパスで、人文学部日本語科の講師として教えている

 

この記事は、ニュージーランドの日本語フリーペーパー「KIWI TIME Vol.91(2017年10月号)」に掲載されたものです。